昨日、ママはゴミ箱から全部助けていた。
小籠包のケースを出して、冷凍庫へ。
シードルの缶は、でっかい空き缶の袋の中で他の缶とは別に立っていた。
手帳は、私のクローゼットの中。
寝る前にこっそり教えてくれた。
おばあちゃんには、昨日の話はもうしない。
今朝も大変なことが起こった。
ママ:「おばあちゃんの血圧の薬が6錠もなくなっている。」
市場に行こうと、エレベーターホールに向かう途中で。
雨が降りそうだからと、ママだけ洗濯物を入れに戻って気づいたらしい。
おばあちゃん:「もうこのところずっと、アレルギーの薬1錠しか飲んでない。」
そんなはずない。
ママが薬のケースに2錠ずつ入れて、2週間分渡してある。
でも、金曜日はケースぐらいから部屋にケースを置いたまま、薬だけ持ってきていた。
部屋に戻って、おばあちゃんをベッドに座らせて、血圧を測る。
ママと、カバンやスーツケース、クローゼットやバスルームを確認する。
ママはトイレのゴミ箱まで、手を突っ込んで見ていた。
見つからない。
血圧は120~130で、問題ないらしい。
ママ:「今朝はいつ飲んだの?」
おばあちゃん:「食事の前かな?」
洗面所の水で飲まない限り、あり得ない。
今日に限って、薬を確認する前に水を買いに行っていた。
30分経っても、血圧に変化はない。
ママ:「昨日、いない間に飲み続けたのか。いっそのこと、腹いせに捨ててくれていたら、いいのに。」
2人になったタイミングで、ママが言った。
窓から捨てていたとしたら。
この前のベランダのティッシュみたいに、どこに行くかわからない。
一昨日、窓が開く部分に鉛筆を置いてて、ママが注意したばかりだ。
その後、しばらく様子を見てから、ママと2人で市場に行った。
鶏肉がもうなかった。
「1匹まるごとならあるよ。」ってお店のお姉さんに言われた。
ママはさすがに買わなかった。
でも、いつものケーキ屋さんで、焼き立てのエッグタルトが買えた。
八百屋さんも冷蔵庫に片付け始めてたけど、いっぱい買えた。
魚屋さんは、いつものお店はもうシャッターが閉まっていた。
いつものお店じゃないところで、エビとサーモンが買えた。
果物屋さんはいつものお兄さんが片付け始めていたけど、マンゴスチンとバナナが買えた。
豚肉屋さんでは、いつものおじさんが途中でいなくなった。
突然戻ってきたと思ったら、いつものケーキ屋さんの箱を渡された。
ママも、さすがにびっくりしてた。
何と、チョコレートケーキをプレゼントしてくれた。
なんだか心がほんわかした。
ママは時々言う。
「辛い思いや大変な思いをした分、人に優しくなれるし、人の優しさがわかるようになる。」
おじさんも、日本で大変な思いをしたのかもしれない。
今日もGrabを待ちながら、茨城県出身の奥さんがいるおじちゃんのレストランをのぞく。
手を振ったら、気づいてにっこり笑ってくれた。
今度はママが見に行ったら、見つけられなかったらしい。
人気があって、店員さんもたくさんいる中華系のお店。
そういえば、ママが漢字で書いたのに、韓国人の店員さんでわからなかったっけ。
ママは薬のことでは、一切おばあちゃんを怒らなかった。
もちろん、お薬当番をお願いされている私にも一切怒らなかった。
一瞬怒ってるのかと心配したけど、真剣にいろいろ考えていたみたい。
こぼすといけないからと、ダイニングでと約束していた水で入れたコーヒー。
市場に行っている間に、またベッドに持って行って飲んでたおばあちゃん。
ママは、それも怒らなかった。
もう一度、約束だけはしていた。
それでも、リビングのソファに持ったまま、おばあちゃんがドーンと座った。
こぼしそうで、今度こそママが怒るんじゃないかと怖かった。
ダイニングって言ったじゃん。
ママはいつも、いっぱい考えて、いっぱい動く。
いっぱい食べて、また動く。
昼寝もするけどね。
ママはやっぱりすごいと思う。
「私なんか、はるかに越えていけるよ」とママは言う。
ホントかな?
でも、ママは絶対嘘はつかない。
よく忘れちゃうけどね。